バラ科ダイコンソウ属 Rosaceae Geum L.
チングルマ Geum pentapetalum (L.) Makino

チングルマ(八甲田山)
チングルマの花(八甲田山)

チングルマは群落を作る最もポピュラーな高山植物。山ではありふれた植物であっても、平地での鉢栽培は意外と難しい。 老化が早く植え替えても花つきが悪くなる。私の経験では挿し木もできるが、やや難しい部類に属する。 挿し木をする場合は今年枝を用いると良い。根を残しての株分けもできるが、一番効率が悪く時間がかかる。 幸いチングルマは実生が容易、その維持には実生による若木の更新が一番と思う。 私は毎年実生を行っているが、客観的データを示すため改めて発芽から実験を行った。

【実生。発芽状態】
  • 種子採種日:2008/05/27
  • タネ播き日:2008/06/03
  • 播き床:ミズゴケ
  • 発芽確認日:2008/06/13
  • 撮影日:2008/06/30
  • 植え替え日:2008/07/15

    [メモ]
    発芽状態を示す。種子は自家採種、ミズゴケに採り播きした。条件がよかったのか10日で発芽した。 写真はタネまき後、約1ヶ月の状態である。本葉が出て成長の早いものは植え替えができる。
  • 【満1年目】
  • @植え替え日:2009/04/23
  • 撮影日(植え替え前):2009/06/27
  • A植え替え日:2009/06/27
  • 植え替え用土:基本用土3、ピートモス1

    [メモ]
    @植え替え時、即効性化成肥料を鉢底ゴロ土の上に置いた。A約2か月後2回目の植え替えをした。 写真は2回目植え替え直前のもので、鉢は8.5cm四連結鉢である。
  • 【開花】
  • 植え替え日:2009/06/27
  • 植え替え用土:基本用土3、ピートモス1
  • 撮影日:2009/07/10

    [メモ]
    当年2回目の植え替えは、9.0cmプラポットへの鉢増しをした。 満1年で花を咲かせたが、普通は2年で花を咲かせる。チングルマは挿し木より実生がよい。

  • 【挿し木】
    チングルマの挿し木はやや難しい部類に属する。 挿し木をする場合従来私は、地植株から勢いのあるシュートに昨年枝を少しつけて挿してきたが成功した記憶がない。 そこで2008/05/19になって方針を変え、地植え株の今年枝だけで挿してみたところ50%で成功した(下の写真参照)。
    ただ折角の今年枝を切るのはもったいなく勇気がいる。 以上をヒントに2009/05/24、鉢植えから間のびの少ない若枝を選び、昨年枝少しつけて挿してみた。 2009/07/19現在、一部に発根しているのを確認している。

    【株分け時に根のある若枝】
    鉢植え株の植え替え時、根茎が太く老化した親木は犠牲にする。 そして根のある若枝があれば、これを切り離して養生すると更新できる。実生より時間がかかるのは止む得ない。

    実生(後列)と挿し木(前列)の比較
    (撮影:2009/07/19)
    【実生】
  • タネ播き日:2008/06/03
  • 播き床:ミズゴケ
  • 植え替え日:2008/07/15
  • 植え替え日:2009/04/23
  • 植え替え日:2009/06/27
  • 【挿し木】
  • 挿し木日:2008/05/19
  • 挿し床:鹿沼土
  • 植え替え日:2009/04/27

    [メモ]:実生苗は小さいのを並べた。

  • [まとめ]
    1. 播き床はミズゴケが良い。種子が良ければ採り播き2週間〜1か月で発芽する。発芽は翌年にも続く。
    2. 生育の良い小苗は年中に植え替えができる。植え替え時鉢底ゴロ土の上に少量の化成肥料を置く。
    3. 春芽が動いたら植え替える。成長が早いので年2回の植え替えをする。
    4. 順調に行けば満2年目には花を咲かせる。ただし苗木に勢いをつけるには花芽をつみ、観賞鉢に移して3年目に咲かせると良いだろう。
    5. 老化が早く植え替えても花つきが悪くなる。挿し木をする場合は今年枝を用いる。株分けでも更新できるが苦労する。実生による若木の更新がお勧めである。

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