イワウメ科イワウメ属 Diapnensiaceae Diapensia L.
イワウメ Diapensia lapponica L. subsp. obovata (Fr.Schm.) Hulten

イワウメ(八甲田山)

私が25年振りに高山植物の実生実験を再開したきっかけは、「イワカガミとイワウメを種から育ててみたい」、という思いからである。 何となく種を播いてみたというのが本音で、発芽日や植え替え日の細かいデータもとっていなかった。 しかし植物が発芽し育ってくると愛着が生ずる。遅まきながら写真を撮りデータも残すようになった。 従って初期のデータは不足している部分がある。今後再実験を重ね、正確なデータを残したい。
イワウメの自生地は礫地〜岩場。礫地の場合はコメバツガザクラやミネズオウなど他の高山植物と共に生えている。 岩場の場合、そこは小さな岩棚になっていたり、岩の割れ目になっていることが多い。 そしてコケ含みのわずかの土に、根を張ってへばりついている。 日当たりに関しても、よく日の当たるかと思えば、半日陰まで幅がある。 イワウメの種を播く場合、まき床は火山礫だけでは発芽してもその後の生育が悪い。 バーミキュライトを加えるなど、水もちを良くする必要がある。

【実生】
  • タネ播き日:
     @2002/09/15
     A2003/08/22
  • 播き床:桐生砂2、鹿沼土1、バーミキュライト1
  • 撮影日:2004/06/28

    [メモ]
    初期の2年間は播き床を2〜3変え実験したが、細かい記録はとっいなかった。 種子がよければ採り播きすると年中に一部発芽する。春には発芽数は増える。
  • 【3年目】
  • 撮影日:2005/07/27

    [メモ]
    イワウメは発芽体が小さく一つずつの植え替えが困難と思われた。実生2〜3年で根を崩さず一回り大きい鉢に、そっと移し替えた。 2006年春、2回目の移し替えをした。用土もやや荒めなものを加え、根を崩さず一回り大きい鉢に移し替えた。
  • 【6年目】
  • 植え替え日:2008/04/06
  • 植え替え用土:基本混合用土3、十和田砂1、蝦夷砂1、富士砂1、バーミキュライト1の混合用土
  • 撮影日:2008/05/16

    [メモ]
    6年目春に3回目の移植をした。実生イワウメの根は軟らかく簡単に分けられた。 見栄えの良い坑化石の鉢に植え替えたものは、秋までに約30%が枯れた。しかし駄温鉢に植え替えたのは枯れなかった。 枯れた原因は分からない。
  • 【7年目】
  • 植え替え日:2009/04/29
  • 植え替え用土:基本混合用土1、蝦夷砂1、富士砂1、ピートモス少量の混合用土
  • 撮影日:2009/07/12

    [メモ]
    そこで2009年春、抗化石鉢のイワウメを再び駄温鉢に植え替えた。鉢は6号駄温平鉢。
  • 【8〜9年目】
    次に初期イワウメ実生実験株3株を並べて示す。タネ播は2002/09/16と2003/08/22に開始し、タネ播は一部重ね播きをしている。 向かって後列左は7号鉢、後列右は6号鉢、前列は3号深鉢である。花芽がついてもおかしくないまで成長しているが花はまだ見ていない。
    なお前列3号鉢のイワウメは抗化石鉢から移したもの。今春も一部枯れて小さい鉢に移した。新葉の展開振りも他に比べて劣り7月下旬廃棄除去した。


    [ここまでのまとめ]
    1. イワウメの種を播く場合、播き床が火山礫だけでは発芽率が悪い。発芽してもその後の生育が大変遅い。 発芽苗に液肥(ハイポネックス)を与えても、なかなか大きくなれず植え替えまでには3年以上かかるであろう。
    2. 播き床にはバーミキュライト、ピートモスを加えるなど、水もちを良くすると発芽率は向上する。ただそれでも生育は遅く、植え替えには2年以上を要する。
    3. 山野草・高山植物の種子を用土に播く場合、「元肥として播き床の中間にマグアンプKなどを入れておくと良い。 発芽してきた時にあわてて移植しなくても生育できる」、とテキストにある。
    4. 今まで私はこの方法を採用していなかった。化学肥料は投与量を間違うと大変危険な意味があり、失敗を心配していたからである。しかし今後はイワウメにも用いてみたいと思っている。
    5. 難物とされる高山植物の実生成功の秘訣は、タネ播き初年度中に発芽苗をいかに大きく生育させるかにかかっている、と私は思う。できればその年のうちに植え替えまでもって行きたいのである。
    6. そこでもう少し良い方法はないかと模索し、2007年から再実験を開始した。その結果播き床としては、奇異に思われる(?)ミズゴケが優れていることが分かった。
    7. 私は初めての種類の種を播く場合、播き床を「用土」だけでなく、「ミズゴケ」にも播くことが多かった。 そして生育の良い方を1年目に植え替える。植え替え失敗に備え、発芽苗を残しているわけである。
    8. 私はミズゴケ床を2008年秋に初めて試みた(それまでイワウメに関しては、火山礫中心の用土であった)。 発芽率はピートモス加用土と同じであるが、生育が良く翌年(2009年)の7月1日に1本1本植え替えることができた。 これはイワカガミの実生と同じ経過であり、採り播き数か月での植え替え可能は驚きであった。
    9. なおイワウメの実験成績は、再実験も含め「高山植物の実生2」に引き続き掲載する。

    【挿し木】
    イワウメの挿し木は聞いたこともないが試みてみた。初期の2003/08/22タネ播のイワウメは、鉢いっぱい・クツション状に成長したがいつまでたっても花芽がつかない。 10年たったら中心部から一部枯れ始めた。そこでその1鉢を犠牲にして挿し芽をとり挿してみた。挿し床はミズゴケと鹿沼土の両者。

    【実生】
  • 挿し木日: 2013/05/29
  • 挿し床:ミズゴケ、鹿沼土
  • 植え替え日:2014/04/20
  • 植え替え用土:基本用土
  • 撮影日:2014/06/19

    [メモ]
    それぞれ9本ずつ挿したところ、ミズゴケ床はすべて発根、鹿沼土床は8本発根した。ミズゴケ床発根苗は成長もより良い。 写真はミズゴケ床に挿した発根苗である。プレステラ105に4株ずつ植え替えてある。挿し木は実生に比べ3〜4年早まるのが分かった。

  • [Home]  [実験植物名に戻る]