ケシ科ケシ属 Papaveraceae Papaver L.
リシリヒナゲシ Papaver fauriei Fedde

リシリヒナゲシ(利尻山)
果実(栽培品)
実生1年目(開花)

リシリヒナゲシの自生地は、風が強く半日は日が当たる火山崩壊礫の斜面。リシリヒナゲシは教科書では多年草となっている。しかし栽培して花が咲いた株は老化し死ぬ。 大きめの深鉢に植え鉢ごと土中に埋めても、開花した株を3年もたせることは難しい。現地では民家の庭先やホテルの花壇にも植えられていた。 栽培のコツをホテルで尋ねたところ、毎年半数を補充しているとの返事であった。
リシリヒナゲシの発芽率は良い。私の経験では物置小屋常温保存の前年の種子でも良く発芽している。 厚播きとなった場合は、早めに間引きをする。またなるべく早く植え替えた方が良いといわれている。 植え替え苗は過保護にせず適宜日光や多少の風はあててかまわないようだ。

【実生3−1。夏播き。採り播きの場合】
  • 種子採取日:2007/07/17
  • タネ播き日:2007/07/19
  • 播き床:富士砂2、桐生砂2、鹿沼土1、赤玉土1
  • 発芽確認日:2007/07/29
  • 撮影日:2007/08/12
    [メモ]
    種子は自家採種採り播きした。10日ほどで発芽する。双葉が出て生育の良さそうなものを、下記A、B、Cの用土で2号プラポット鉢に植え替えた。 なおその際、鉢底には少量の即効性化学肥料を入れた。
  • 【実生3−2】
  • 植え替え日:2007/08/12
  • 植え替え用土:
     A。富士砂1、桐生砂1
     B。富士砂2、桐生砂2、赤玉土2、腐葉土1、ピートモス1
     C。富士砂4、桐生砂4、赤玉土2、腐葉土1、ピートモス1
  • 撮影日:2007/10/16

    [メモ]
    植え替え用土に極端な差はなかった。リシリヒナゲシは植え替えと肥料、日光により急に大きくなった。
  • 【実生3−3。満1年で開花】
  • 植え替え日:
     @2008/04/08
     A2008/05/20
  • 用土:富士砂、桐生砂、十和田砂、蝦夷砂各1
  • 撮影日:2008/06/16

    [メモ]
    2008年に入って、2度の植え替えを行った。鉢底には化学肥料を入れる。最終の植え替え鉢は3.5〜4号深鉢である。 6月上旬から花芽をつけ次々と開花した。
  • 【実生4−1。夏播き。埋め鉢の親株のまわり】
  • 種子入手先:利尻島のホテル(2007/07/16)
  • タネ播き日:2007/08/01
  • 発芽確認日:2007/08/12
  • 撮影日:2007/09/21

    [メモ]
    種子は宿泊した利尻島のホテルで、「旅の思い出」として頂いた。埋め鉢(7号駄温深鉢)の親株のまわりに播いたところ約10日で発芽。 込みすぎた発芽苗は適宜間引きをした。
  • 【実生4−2】
  • 植え替え日:2008/05/20
  • 撮影日:2008/08/28

    [メモ]
    そのまま雪の下で年を越させたところ、親株は根腐れで死んだ。一方発芽小苗は枯れなかった。少しは成長したようにみえたが、なかなか大きくならない。 鉢を掘り返して観察したところ、発芽小苗のヒゲ根が鉢内に張っていた。そこで5株を植え替え、元の場所に埋め戻した。2008/08/28日、1株が開花した。
  • 【実生5−1。秋播きの場合】
  • タネ播き日:2007/09/01
  • 播き床:富士砂、桐生砂、十和田砂、蝦夷砂各1
  • 発芽確認日:2007/09/08
  • 撮影日:2007/10/16

    [メモ]
    実生3と同じ種子を秋播きしてみた。鉢は5号中深鉢。発芽苗は間引きし、植え替えは行わなかった。タネまき40日の状態である。幼苗は雪のなかでも枯れなかった。
  • 【実生5−2】
  • 植え替え日: @2008/04/08。 A2008/05/20
  • 用土:富士砂、桐生砂、十和田砂、蝦夷砂各1
  • 撮影日:2008/07/07

    [メモ]
    @4月早春の植え替えで大きくなり、特に大きくなった数株を、A5月にも根を崩さず2回目の植え替えをした。 鉢は3〜3.5号深鉢である。実生3より少し遅れたが次々花茎が持ち上がり花を咲かせた。

  • [まとめ]
    1. リシリヒナゲシは実生1〜2年で開花する。成株は子株を作らないので、株分けによる繁殖はできない。 私の経験では花を2年続けて咲かせることができている。しかし開花を3年期待することは難しい。 繁殖にはタネ播きを繰り返す。種子は入手次第採り播きする。
    2. 実験成績は実生3から掲載したが、初期の実験・実生1と実生2は失敗であった。 間引きを怠りハイポネックスを与え過保護に育てたところ、発芽苗は本葉が少し出たところで生長は止まり、 年を越したら全て死んでいた。リシリヒナゲシは発芽苗の根が込み合うと成長を止める(?)のに気づいた。
    3. 実生3では前回の失敗に懲り、間引きをし発芽苗の本葉が出たところで早めの植え替えをした。 植え替えと肥料、日光により急に大きくなっている。年を越してからは2度の植え替えにより開花した。 ただし実生苗の生育にはばらつきがでる。発育は遅れた苗でも植え替えを繰り返し、満2年目には花を咲かせた。
    4. 実生4は地埋め親株の周りに播いた。発芽苗は間引きを繰り返し植え替えを行わず、そのまま雪の中で過ごさせた。 春に鉢を掘り起こして調べたら、親株は死んでいた。そこで小苗の5株だけを植え替えて埋め戻したところ、再び成長しはじめ1株が開花した。 2年目春にも鉢を掘り起こして植え替え、全て開花している。
    5. 実生5は秋播きだったので、間引きだけを繰り返し植え替えは行わなかった。発芽苗は冬でも枯れなかった。 早春に1回目の植え替えを行い、生育の良い株は植え替え2回でほとんどが開花した。発育の遅れていた株も、もう一冬を越した2年目には植え替えで全て開花している。
    6. なおロックガーデに鉢ごと埋め込むと、こぼれたタネから自然発芽する苗が見られ、黒土の中でも生育し花を咲かせる。 ただし、こぼれタネによる平地での自然増殖は期待できないようである。
    【根の状態】
    リシリヒナゲシは1つの株から3〜4個の花を咲かせることもある。一見数株に増殖したかと思われるが、根茎は1本で沢山のひげ根で支えられている。 株分けで殖やすことはできない。

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