むすび


以下の文は、青森市に拠点を置くタウン誌・『北の街』の平成16年12月号の「待合室」に掲載された私の一文です。 ここに原文のまま再掲して、私のホームページ「高山植物の実生」へのむすびとします。 なお本文は実験開始間もない平成16年のものです。 表現に適切さを欠くところがあれば、ご容赦願いたいと思います。

北の街 通巻508号
発行人 齋藤せつ子
昭和37年7月1日創刊
発行所 青森市桜川1-3-11
北の街社 Tel:017(765)2658

高山植物の実生
沼田 俊三

 二、三年前から山草の実生研究をまた始めた。また始めたということは、二十年ほど前にも一度研究したことがあったからである。 その時はハクサンシャクナゲ、ムラサキヤシオツツジ、キレンゲツツジ、クロフネツツジ、トショウ、 マツなど盆栽仕立てができる木ものが主で、その他キバナシャクナゲ、チングルマ、イワウメなどの高山植物もやってみた。 種子は自家採種、できないものは大手園芸店の通信販売で入手した。
 山草園芸の書物にはその増殖方について書いてある。 しかし単に「実生」「挿し木」「株分け」となっているものが多く、特に実生に関しては詳しくない。 書物の著者自身もやったことがないのでは、とも窺われる。私は本当に発芽するかを自分で確かめたかったのである。 そして実際やってみると種子がよければ確かに発芽をしたし、成木まで育てることができた。 現在私が所持している花木盆栽の多くは、その時種をまいて育てたものなのである。
 さて私の入会している青森山草会の展示会は毎年五月初旬、勝田の中央公民館に行われる。 そしていつも見学者から栽培方法、増殖方法を聞かれ、時には株分けを所望される。 山草園芸は昔から難しいものとされていて、なかなか増えないものが多い。 なかには増えるには増えるが長時間を要するもの、さらには維持するのがやっとというのもある。 私はより多くの人の希望に答えたいと、再び研究を始めたわけである。
 チングルマの実生は最も容易で三年で花をつける。 ゴゼンタチバナは四、五年で花をつける。ただ実生に易しいものは少なく、長年月の根気を要するものがほとんどなのである。 例えばイワカガミの実生研究をした人は聞いたことがない。 私の研究ではとりまきで確実に発芽をするものの、成長は非常に遅く植え替えに手間のかかるということである。
 ヒメシャクナゲ、イソツツジは実生より挿し木の方が確実である。 エゾヅノガザクラ、アオノツガザクラ、イワヒゲも成功率は悪いが挿し木で発根する。 ミネズオウは挿し木の活着率が悪く実生がよいようだ。そのほかハイマツやウラジロヨウラクも実生がよい。 超難物、不可能といわれるイワウメも今回は持ちこたえている。 その他イワブクロ、ヨツバシオガマ、イワギキョウ、メアカンキンバイ、ヒナザクラ、ウサギギクなども実験中で、 そのうちに成果をホームページで公開したいと思っている。
(青森市、沼田外科眼科医院院長)

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