イワウメ科イワウメ属 Diapensiaceae Diapensia L.
イワウメ Diapensia lapponica L. subsp. obovata (Fr.Schm.) Hulten(再実験)

「高山植物の実生1」を整理する。
  1. 実生1(播き床:混合用土、バーミキュライト。タネ播日:2002/09/16)は、初回植え替え(移植)まで3年かかった。クッション状に鉢一杯になったが10年たった現在まだ花芽を見ない。
  2. 実生2は、さらに少量の有機質を混ぜた用土に播いた。実生1より発芽・生育率が良く驚いた。しかし植え替え(移植)に2年かかっている。これもまだ花芽をつけない。がヒントを与えてくれた。
  3. 実生3(播き床:火山礫中心)は失敗であった。イワウメは砂礫中心の播き床では、発芽率も生育率も著しく劣り失敗に終わる。イワウメは思っていたより水を好むのかも知れない。
  4. 実生4(播き床:火山礫中心の混合用土細粒。)は辛抱2年で一株ずつ移植できた。しかし発芽率と生育率は実生2より悪い。無理して植え替えたが今後何割生き残り、順調に生育できるのか分からない。
  5. 以上の実験からイワウメの播き床は、水持ちを良くすることと有機質を用いる工夫が必要と分かった。

「高山植物の実生2」に移る。
今回は播き床をピートモスを加えた用土と、ミズゴケの2つで再実験を開始した。なおタネ播き鉢は、ピートモス加の方は5号駄温平鉢、ミズゴケ床がアップルウェアー社製「プレステラ95型」である。

実生5
  • タネ播き日:2008/09/16
  • 播き床:ミズゴケ
  • 発芽確認日:2008/10/08
  • 撮影日:2009/05/28
  • 実生6
  • タネ播き日:2008/09/16
  • 播き床:混合用土
  • 発芽確認日:2008/11/10
  • 撮影日:2009/05/28
    1. 実生5の播き床はミズゴケ単独。
    2. 実生6の播き床は、基本混合用土2、ピートモス2、桐生砂1、富士砂1、十和田砂1の混合用土。
    3. 両者とも約20日で発芽を確認。しかし発芽後の生育は徐々にミズゴケ床の方が差をつけた。
    4. 混合用土のピートモスは発芽を助けているが、肥料効果は少ないようだ。用土中間にマグアンプKを置くとか、また完熟腐葉土を入れるなどの工夫が必要。

    実生5の生育が思ったより良かったので、思い切って植え替えてみた。写真は植え替え前のもの。実生6は1年間植え替えず、このまま観察を続ける。

    実生5
  • 撮影日:2009/06/25
  • 植え替え日:2009/06/30
  • 植え替え用土:混合用土
  • 実生6
  • 撮影日:2009/06/25
  • 植え替え:(−)

    1. 実生5の植え替え用土は基本用土5、ピートモス1、細かい完熟腐葉土1とした。用土はフルイで微細粒を除去した。従ってピートモスと腐葉土は半分くらい除去されている。
    2. 植え替え鉢は2号(6.0cm)プラポット。鉢底にマグアンプKを1粒置き、1鉢に3〜4本ずつ移植した。
    3. 実生イワウメの根は細かく、ミズゴケにからんでいた。なるべく切らないようにし、一部はミズゴケをつけたまま植え替えた。
    4. 潅水時の跳ね返り防止には、十和田砂1、基本用土1のミジン抜き細粒を用いた。
    5. イワウメをミズゴケに播く発想は思いつきにくい。しかしタネ播き9か月で一株ずつ植え替が出来たのは成功と思う。
    6. なお実生6の鉢には、2009/06/30日、数箇所にマグアンプKを埋め込んでみた。

    【3年目】(撮影日:2011/08/14)
    実生5(左)
  • 植え替え日:2010/05/16
  • 植え替え用土:基本用土3、蝦夷砂1、マグアンプK
    実生6(右)
  • 植え替え日:2011/04/20
  • 植え替え用土:基本用土3、蝦夷砂1、マグアンプK

    [メモ]
    写真は実生5(播き床はミズゴケ)と実生6(播き床は用土)との生育の対比。実生5ではタネ播満1年未満(2009/06/30)で植え替えた。 しかし翌春の植え替え時(2010/05/16)の観察では、冬季の凍結の繰り返しにより20%に根が浮き上がり死んだ。 1年での植え替えは生育の良いものには可能であるが、2年目以降に植え替えるのが安全と分かった。
    実生6は3年目(2011/04/20)で1回目の植え替えをした。なお今までの実験からイワウメの植え替えは毎年行う必用の無いことも分かってきた。鉢はプレステラ95である。

  • [ここまでのまとめ]
    1. 採り播きすれば、当年中に一部発芽する。播き床はミズゴケがベスト。(用土に播く場合は、有機質を混ぜ緩行性化成肥料を入れる。ただしミズゴケ床より劣る)
    2. 2年目。ミズゴケに播いて発芽した小苗は2年目に1回目の植え替えをする。根はやわらかく、多少切れてもかまわない。(用土に播いて発芽した小苗の植え替えは3年目以降となる。)
    3. 私はプレステラ95に3〜4株ずつ植え替えている。植え替え用土は基本用土を中心とするが、火山礫や若干の有機物質を混じて実験中。(用土播きの小苗もプレステラ95、又は3号プラポット等に3〜4株ずつ植え替える。)
    4. 4年目。さらに2年後に2回目の植え替えをする。植え替え鉢は5号駄温平鉢。イワウメを石付けとする場合はこの時点で行う。ここまでが私の実験の最新情報。
    5. 移植子苗は少しすつ大きくなりクッション状になるはずである。そしてぜひ花芽をつけてもらいたいと願っている。

    [Home]  [実験植物名に戻る]